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イタリア語の魅力を探るための考察 その2. 呼称代名詞

イタリア語の魅力を探るための考察
その2:二人称単数形(君、あなた)の呼称代名詞 ( tu voi Lei )

中世までイタリアでは、二人称単数形の呼称は "tu" (友人、親族、知人)と "voi"(敬称:come forma di rispetto) の二つで構成されていました。相手が一人であっても、敬意を表すときには二人称複数形 "voi" を使ったのです。
"voi" の代わりに敬称として ”Lei" が使用されるようになったのは、1500年代になってからのことです。
当時、イタリアの多くの地域を支配していたスペインが、敬称として三人称を用いていたので、そのことがイタリア語に影響を及ぼし、1900年代の初頭まで、"voi" "Lei" が並行して使われるようになりました。
"voi" は、お互いにある程度の親しみを持っている場合の敬称として、
"Lei" は相手を良く知らない場合、あるいは相手が社会的により高い地位にある場合に。

イタリアのファシスト独裁政権の時代(1922~43年)には、イタリア国家の優位性を掲げたムッソリーニが、イタリア語の純粋さを求め、外国の影響を受けた言語を排除し、1938年、政権によって、スペインの影響を受けた ”Lei" を禁止し、 代わりに "voi" の使用が定められました。ところが第二次大戦後、この恣意的な押し付けによる "voi" を使う習慣が次第に薄れてゆき、 ”Lei" が、一般的に使われるようになったのです。
しかし、今日でもなお、イタリア南部、特にナポリ近郊では、二人称単数形(あなた:敬称)の呼称代名詞として、"voi" が使われています。
Targa fascista che pubblicizzava l'uso del tu e del voi.
ファシズム政権下で生まれ、今も並行して使われているイタリア語の一部を挙げておきます。
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こちらも参考にしてくださいね。
イタリア語の「tu」と「Lei」
Vacanze romane (ローマの休日のイタリア語吹き替え版)の「voi」
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