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【第61話】ピエモンテ州出身の著名人:その4 アルフォンソ・ビアレッティ(Alfonso Bialetti)

カザーレ・コルテ・チェッロに生まれたアルフォンソ・ビアレッティ(Alfonso Bialetti, 1888-1970)は、1933年に「モカ・エクスプレス(Moka Express)」を開発し、コーヒー消費のあり方に革命をもたらしたイタリアの実業家であり発明家です。
彼の発明は、それまでお店で飲むものだったエスプレッソをイタリアのすべての家庭で手軽に楽しめるものにし、コーヒーを飲むという日常の儀式を一変させました。
彼のキャリアの原点は、1910年頃のフランスへの移民生活にあります。現地で鋳造職人として働くなかで、当時のイタリアではまだほとんど知られていなかったアルミニウムの「金型鋳造(金型に溶かした金属を流し込む技術)」技法を修得しました。
1919年にイタリアへ帰国した彼は、クルジナッロに自身の工場「Alfonso Bialetti & C. – Fonderia in Conchiglia」を設立し、当初はアルミニウムの半製品や機械部品の製造に特化していました
伝説によれば、モカのヒントは研究所からではなく、妻のアダが洗濯をしている様子を観察していたことから得られたとされています。当時使われていた「リシヴェーズ(lisciveuse)」は、中央に穴の開いた管が通った深鍋のような洗濯機でした。沸騰したお湯が管を通って昇り、穴から出て服の上に降り注ぐことで、洗剤を溶かす仕組みになっていました。
ビアレッティは、この原理をコーヒーにも応用できると直感しました。ボイラーの中の水が蒸気の圧力によって押し上げられ、コーヒー粉の入ったフィルターを通って上部のサーバーに溜まる、という仕組みです。
この新しいコーヒーメーカーは「モカ・エクスプレス」と名付けられました。
名前の由来: 質の高いコーヒー豆の輸出で有名だったイエメンの都市「モハ(Mokhā)」へのオマージュ。
素材: 軽くて丈夫であり、当時の先進性とモダンさの象徴であったアルミニウムを採用。
形状: 濡れた手でも握りやすいよう設計された8角形のフォルム。当時のアール・デコや未来派の美学からインスピレーションを受けています。
当初、生産は手作業(年間約70,000個)にとどまり、主に地元の見本市などで販売されていました。この発明を第二次世界大戦後に世界的な大ヒットへと導いたのは、アルフォンソの息子であるレナート・ビアレッティ(Renato Bialetti)でした。

ビアレッティのイタリア製コーヒーメーカー「モカ・エクスプレス」
レナートは広告に莫大な投資を行い、ミラノ見本市に斬新な展示を出展しました。
そして1953年、漫画家のポール・カンパーニによって、レナート自身を風刺画にした
有名なキャラクター「髭のおじさん(Omino coi Baffi)」が誕生しました。
時代を超えたアイコン
今日、モカはインダストリアルデザインの傑作とみなされており、累計生産数は3億2000万個を超えています。ニューヨーク近代美術館(MoMA)やミラノ・トリエンナーレといった名高い美術館・博物館にも展示されています。カプセル式の最新マシンが登場した現代においても、モカはイタリアの日常的なコーヒー文化の象徴であり続け、90年以上もの間、そのオリジナルのデザインをほぼ変えずに保ち続けています。
レナート・ビアレッティの遺灰は、彼のモカの中に納められ埋葬されました。
引用文献:BIALETTI:La nostra storia
次回2026年11月18日は「Pietro Ferrero」です。