美しい歌曲とアリアたち

オペラの歌詞には魅力的な言葉がちりばめられています。その訳詞の一部を順次ご紹介します。
これらの歌詞を読んで、曲を聴いてみたい、歌って見たいと思われる方、また改めてじっくり
勉強してみようと思われる方がいらしたら幸いです。

Puccini作曲  Le Villi (妖精達) から 第一幕:第二景 アンナのアリア「Nontiscordardime」

Montserrat Caballe 
Kiri Te Kanawa 
 忘れな草、その名をイタリア語では
  「Nontiscordardime」と呼ぶ。
  これは、Non ti scordar di me! 
  「私を忘れないで!」 と言う意味である。

Anna
Se come voi piccina
Io fossi, o vaghi fior,
Sempre sempre vicina
Potrei stare al mio amor. 
Allor dirgli vorrei:        
“Io penso sempre a te!”
Ripeter gli potrei:         
“Non ti scordar di me!”

Voi, di me piu felici,
Lo seguirete, o fior;
Per valli e per pendici
Seguirete il mio amor...
Deh, se il nome che avete
Menzognero non e,
Al mio amor ripetete:
“Non ti scordar di me!”

ああ、可愛い花よ、もし私が
お前たちのように小さく可愛い花なら
いつもいつも
あの人の傍にいられるでしょうに、
そして、あの人に言いたいのよ。
「私、いつもあなたを思っているの!」と。
さらに、あの人に何度もこう言えるわ、
「私を忘れないでね!」と。

お前たちは私よりもずっと幸せね、
あの人について行けるのですもの。
谷から谷へ、丘から丘へ
私の恋人について行くのですもの..
ああ、もし、お前たちの名前が
偽りのものでないなら、
私の愛する人に繰り返してね、
「私を忘れないでね!」と。

V.ベッリーニ作曲「ノルマ」から<Casta Diva : 清き女神よ>

Giudietta Pasta 「ノルマ」初演(1831年12月26日)の練習が
始まると、ノルマ役のジュディエッタ・パスタは、
アリア<Casta Diva>の余りの難しさに
作曲家ベッリー二に書き直しを申し入れました。
しかし、ベッリーニは彼女に逃げ道を与えず、
彼女も彼の意志に屈し、苦しい練習の末、舞台に臨み、
大成功を収めました。

ノルマのアリア(第一幕 第四景)
<Casta Diva:清き女神よ>
Casta Diva, che inargenti
Questa sacre antiche piante.
A noi volgi il bel sembiante
Senza nube e senza vel...

Tempra tu de’cori ardenti,
Tempra ancor lo zelo audace,
Spargi in terra, quella pace
Che regnar tu fai nel ciel.

清き女神よ!これらの聖なる老木を
銀色に照らし出す貴女よ、
雲や霞に隠れることなく
その美しい姿を我々に見せてください...

貴女は燃える心を和らげ
はやる情熱を鎮めてください、
貴女が天を治めるあの平和を
この我々の地にも広げてください。

イタリアオペラ対訳双書36「ノルマ」5頁より

W.A.モーツァルト作曲「フィガロの結婚」から<Non so piu' cosa son, cosa faccio>

La famiglia Mozart,
in un' incisione della fine del Settecento

Gabriele Sima canta 
"Non so piu' cosa son, cosa faccio"  
ケルビーノのアリア(第一幕)
<Non so piu' cosa son, cosa faccio>

もう自分が何者で、何をしたら良いのか分らない、
今燃えあがったかと思えば、また凍りついてしまう、
どんな女性にも平静を失い、
胸がときめいてしまう。

愛という言葉だけで
僕の心は喜びに震え胸は高鳴る、
そして説明しがたい欲求で
愛について語らずにはいられなくなってしまう。

目覚めては愛を語り
夢の中でも愛を語る、
水に、草に、湧き出る泉に、
こだまに、大気に、
この空しい言葉の響きを
運び去ってしまう風に。

そして、もし僕の言葉に耳を傾けるものがいなければ
自分独りで愛を語るんだ。

イタリアオペラ対訳双書16「フィガロの結婚」9頁より

W.A.モーツァルト作曲「フィガロの結婚」から<Voi che sapete che cosa e' amor>

ケルビーノのアリエッタ(第二幕)
<Voi che sapete che cosa e' amor>

恋とはどんなものか
ご存知の貴女方
さあ、判断してください。
僕がそれを心の中に抱いているかどうかを。

僕が経験していることを
貴女方にお話します。
僕にとっては初めてのことで
それを理解することができません。

熱望に満ちた
愛情を感じ
それは今、喜びかと思えば
次の瞬間には苦悩となるのです。

凍てついたかと思うと、次には
心が燃え上がるのを感じるのです。
そしてまた一瞬ののうちに
冷たく凍ってしまうのです。

それでも再び我を忘れて
幸せを追い求めるのです。
誰がそれを手にして
それがどんなものか分らないのです。

おのずと溜め息がでて
嘆いてしまうのです。
我知らず心ときめき
体が震えるのです。

夜も、昼も
安らぎが見い出せないのです。
でも僕はこうして悩んでいるのが
好きなのです。

恋とはどんなものか
ご存知の貴女方
さあ、判断してください。
僕が心の中に、それを抱いているかどうかを。

イタリアオペラ対訳双書「フィガロの結婚」21頁より

プッチーニ作曲「トゥーランドット」から

Turandot, frontespizio del libretto. トゥーランドット(第三幕:第一場) 

でも、私はあなたを恐れたのです!...

あなたの目には
英雄たちが放つ光、そして
卓越した自信があったのです。
その光ゆえに、私はあなたを憎み、
その自信ゆえに、私はあなたを愛したのです。
あなたに勝っても、あなたに負けても、
いずれもが恐怖であろうと
私は苦しみ、動揺しました...

そして私は負けました!... 負けたのです、
あの謎解きに負けたのではなく
恐ろしくも、妙なるその炎に、
あなたから私に伝わる
その情熱の炎に負けたのです!

イタリアオペラ対訳双書7「トゥーランドット」38頁より